ランカウイ島の蝶を訪ねて
シロオビモンキアゲハ |
蝶友Kさんのご案内でマレーシア・ランカウイ島に行って来た。 ランカウイを訪れるのは2004年の夏に続いて2度目になる。前回 はリゾートホテルのザ・ダタイに宿泊したが、ホテルとビーチをのん びり行き来するだけだった。 深い森に囲まれたコテージの周りは蝶も多く、夜になるとサルなの か鳥なのか、あちこちから鳴き声が聞こえ感激した。 また、ランカウイにやって来たいと思った。 |
サルペドンタイマイ(アオスジアゲハ) |
今回は妻を置いて、蝶の観察主体の旅である。 リゾート・ホテルではなくクア・タウンのど真ん中にあるBay View Hotelに宿泊した。とても安いが快適なホテルである。 ザ・ダタイと違って、ホテルの目の前がビーチという訳にはいかな いのが、ちょっぴり寂しい。その代わり町の食堂があちこちにあり、 気軽に食事を楽しめる。 |
エベモンタイマイ(ミカドアゲハの仲間)の集団吸水 |
2月7日深夜、クアラルンプール経由でランカウイ島に入った。 この季節、島は乾季にあたる。 しかし、雨がもう3週間も降っていないという。熱帯雨林は花が ほとんどなくからからに乾ききっていた。 林内に積もった落ち葉は水気がまったくなく、林道は歩くと土埃 が舞い上がるほどだった。 |
緑色の翅が美しいタイマイ |
Kさんからは「蛇には気をつけて」と言われている。 毒蛇のグリーンスネークやキングコブラにもよく会うし、5メートル もあるアナコンダもいると脅かされた。 もうひとつは吸血鬼のヒル。いつのまにか血をたっぷり吸っている から怖い。忌避剤のスプレーを染み込ませて、観察に備えた。 |
アンティファテスタイマイ(オナガタイマイ)とエベモンタイマイ(ミカドアゲハ) |
観察初日の9日も朝から雲ひとつない快晴。 気温がぐんぐん上がって、昼前には30度を軽く超えていた。 「一雨ふらないかなあ」とKさん。 あまりの乾燥で蝶の姿は例年の10分の1以下だという。 そういえば、滞在中クア・タウンの街中を飛ぶ蝶の姿を一度も見か けなかった。 |
アンティファテスタイマイ(オナガタイマイ)の吸水 |
吸水中の蝶たち |
まず、DURIAN WATER HALLに向かった。 渓流に沿って遊歩道があり、季節があえばキシタアゲハが優雅 に舞っているという。 時間が8時半で渓流に日差しが差し込むにはちょっと時間が早 すぎた。まだ、蝶は目を覚ましていないようだった。 |
マネシアゲハとエベモンタイマイ |
エベモンタイマイ、マネシアゲハなどの吸水 |
Book Villageに転進する。 ここはランカウイ島最大の蝶の産地で、400種〜500種生息す るというこの島の蝶のほとんどが見られるという。 数年前、林道が舗装され蝶は大分減ってきたそうだ。 上流にはマレー人の家族が水浴びする姿も見られる。川沿いに わずかに湿った砂地があり、そこに蝶たちが吸水にやってくる。 |
マネシアゲハ |
林道を歩いても花もなくあまりシャッターチャンスがないのでぼく はこの吸水場所に座り込んで蝶たちを待つことにした。 わずかな砂地だが、そこにサルベドンタイマイやエベモンタイマイ などのタイマイやマネシアゲハたちがやって来る。 中にはとても敏感な蝶もいてカメラを構えて近づこうとするとさっと 逃げてしまうものもいる。 |
シロモンルリマダラ |
遠くからそっと近づき、するとすばやくそれを察知してふわりと 逃げる。また、そっと近づくとふわり。遠くからやっとシャッター を切る。そんな繰り返しがこの写真である。 シロモンルリマダラはとてもきれいな蝶だが、吸水は敏感で、 遠くからしかシャッターが切れなかった。 |
イナズマチョウ |
Seven Wells Water Fallもなかなか良い観察地である。 渓流沿いにイナズマチョウが鋭い速さで飛翔している。 止まると翅を開いてポーズをとってくれるが、対岸の木の葉 の上だったりしてなかなか近くには止まってくれない。 崖から落ちそうになりながら、体を乗り出してやっと撮影した が、いい写真にはならなかった。 |
アオアタテハモドキ |
タテハモドキ |
沖縄などで良く見かけるアオアタテハモドキやタテハモドキも ランカウイ島で数は少なかったが目撃できた。 乾いた林道をすばしこく飛んでいたが、ちょっとかわいそうな 気もした。雨が降れば蝶たちは一気に増えるのだろうが、こ れでは仲間と一緒に遊ぶことも出来ない。 |
キチョウ |
クロテンシロチョウ |
シロチョウ |
島にいる間、Kさんに連れられて、町の食堂で食事をした。 ともかく物価はものすごく安く、缶ビールは80円くらい、ヴァイキン グ方式のマレー料理は200円もあれば満腹だった。 ただ、こういう食堂は鶏料理が主体でブタも牛もない。夜の中華 料理も鳥だけで、鶏が嫌いなぼくは「ノー チキン」「Without Chikin!」と毎晩叫んでいた。ウエイターは「OK OK」と調子の 良い返事をするのだが、持って来る料理にはちゃんと鶏肉が入っ ていてがっくりさせるのだった。 |
蛇も嫌いだが、ヒルもいやだなと思って万全の準備をしていた。 「草むらに入るときはどちらも注意して下さい」とKさん。 だが、降り積んだ木の葉はかさかさでヒルもどこかに隠れてし まったようだった。 滞在中ヒルに襲われることはなかった。 ヒルに血を吸われると時にはズボンまで血で真っ赤になってしま うことがあるそうだが、傷口にタバコを塗りつけておくといいそうだ。 |
レモニアスタテハモドキ |
キシタアゲハを見たいと思っていたが、木の上はるか上空を飛 ぶのを一度見たきりだった。 大型のアゲハ類はモンキアゲハ、ポリテスアゲハを見るくらい だった。吸蜜する花がない上、これだけの乾燥だからやむをえ ないのかもしれない。 |
ポリテスアゲハ(シロオビアゲハ) |
コモンマダラの一種 |
コモンマダラの一種 |
Book Villageで熱帯雨林の中の細い道をかき分けて歩いて いるとマダラチョウが次々飛び出してきた。そのうちあちらにもこ ちらにも無数のマダラチョウが止まっている。 ぼくが歩いて行くといっせいにぱあっと飛び立つ。どのくらいマダ ラチョウがいるのだろうか。 マダラチョウの森に迷い込んだような気がした。 |
ルリマダラの一種 |
それはまさに夢を見ているような感じだった。 ちょっと薄暗い森にところどころ日が差し込んでいる。 マダラチョウがいるのはそのわずか100メートルくらいの空間な のだ。1種類だけではなく、何種類かのマダラチョウが生息して いるのだ。ただただ、熱帯のすごさ、神秘に見とれるだけだった。 |
ルリマダラの一種 |
ルリモンジャノメ |
この渓谷の上流はマレー人たちのかっこうの水浴び場になって いる。小さな滝が流れ落ち、そこが遊び場になっていてこどもたち がどぼんと飛び込んだり、水の中にもぐったり歓声を挙げている。 川べりで焚き火をしてバーベキューのようなことをしたりしている。 その食事あとや焚き火の跡に蝶たちが集まってくる。 |
ヒメジャノメの一種 |
ここは若いカップルのデートスポットにもなっているようだった。 岩陰のちょっとした清流に若い男女が水遊びをしながら抱き合っ ていたりする。高校生ぐらいの若い少年少女が熱い抱擁をして いる姿もあって、目のやり場に困ったりする。 そこに珍しい蝶がとんできたりするものだから、右往左往して変 な闖入者が邪魔をする。でも、熱いカップルはそんなことはまった く意に介さないのだった。 |
ランカウイ島にはセセリチョウが多産する。 かなり大型の個体から、ものすごく小さなハエのようなセセリま でかなりの種類が生息している。 セセリ専門に研究にやってくる人もいるそうだ。「セセリの世界 は奥が深いですから」と言われ、そんなものかと感心した。 |
シロウラナミシジミ |
シロウラナミシジミ |
ランカウイ島にはキララシジミという宝石のような蝶が生息して いる。Kさんもこの蝶に魅せられたひとりだ。 何種類かのキララシジミがいるが、翅の表はラピスラズリのよう に濃いブルーに輝いている。 なんとか写真を撮りたいと思ったが、そんなに簡単にはシャッタ ーチャンスは訪れないのだった。 |
シルビアシジミ |
DURIAN Water Fallの駐車場手前の草地を分け入ってみると 小さなシジミチョウがちらちらとたくさん飛んでいた。 ホリイコシジミかと思ったら、シルビアシジミだった。 日本では絶滅危惧種になっているが、ランカウイ島ではまだまだ 健在だった。カメラを向けるが、小さくてなかなかピントを合わせ るのに苦労した。 |
ホリイコシジミ |
シルビアシジミ |
GUNANG RAYA Golf Club横の林道はキララシジミの多産地 だ。開けたオープンスペースにはこの蝶が見られるという。 しかし、ここの林道沿いの草地はヒルや毒蛇も多いので要注意の 場所でもある。 |
ランカウイ島の蝶の観察は3日間だった。蝶は多い年の10分の1 以下だというが、それでもとても楽しい旅だった。 蝶の名前の同定が出来ないのが残念だが、いずれ追々やってい きたい。間違いなどご教示下さい。 (2009年2月7日〜11日) |