クジャクチョウ
クジャクチョウ (2016年8月7日 長野県東御市) |
夏の高原でひと際華麗なこの蝶の名前は「クジャクチョウ」。 なんて素敵な名前なんだろう。 孔雀が羽を広げたような鮮やかな模様が翅いっぱいに広がっ ている。 そして日本産亜種の学名は「Inachis io geisha」。 イオというのはギリシャ神話で、ゼウスの妻ヘラに仕えた美女 の名前。「大辞泉」を引っ張りだすと、こう書いてあった。 「ゼウスに愛されたが、ヘラの怒りを恐れたゼウスに牝牛に変 えられ世界中を放浪。最後にエジプトで人間の姿に戻された。 エジプトの女神、イシスと同一視された」 ゲイシャはもちろん”芸者”。 こんな艶かしい和名、学名を持った蝶は他にない。 イオが世界中を放浪したようにヨーロッパにも広く分布するが、 国内では分布の南限は滋賀県の伊吹山あたりという。 華麗に草原を舞うクジャクチョウも成虫で冬を越し、翌春には ぼろをまとったように痛んだ翅で日光浴している。 |
クジャクチョウ (2022年8月19日 長野県小諸市) |
クジャクチョウ (2022年8月9日 長野県富士見町) |
クジャクチョウ (2022年8月9日 長野県富士見町) |
クジャクチョウ (2020年8月18日 長野県小諸市) |
クジャクチョウ (2020年8月18日 長野県小諸市) |
高原の花園でベニヒカゲと戯れていると、クジャクチョウがあちこち で吸蜜しているのに気付いた。それもかなりの数だ。 数年前、突然クジャクチョウが見られなくなったことがあった。何が 原因なのか分からない。 一昨年、昨年と少しずつクジャクチョウは復活の兆しが見えて来て いた。それが今年はこんなに多いのかとちょっとびっくりだった。 ベニヒカゲの発生地、林道沿いのヨツバヒヨドリ、アサギマダラの集 結地とどこでもクジャクチョウが群れていた。今日一日で40頭は見 ただろうか。まさにクジャクチョウ大復活といった感じだった。 1ヶ月半ぶりの県外移動だったが、夏の高原はこんなにクジャクチ ョウで賑わっていたのだろうか。とってもうれしかった。 それと同時に蝶の生命力のたくましさにも感動した。 キベリタテハも同じような状況にある。昨年あたりから少し復活とい う話もあるが、クジャクチョウと同じように大復活して欲しいものだ。 (2020年8月18日) |
クジャクチョウ (2019年8月8日 長野県乗鞍岳) |
クジャクチョウ (2017年8月27日 群馬県嬬恋村) |
クジャクチョウ (2017年8月27日 群馬県嬬恋村) |
クジャクチョウ (2017年8月27日 群馬県嬬恋村) |
クジャクチョウ (2018年8月14日 長野県小諸市) |
ここ数年、クジャクチョウとキベリタテハが姿を消すという異変が起きて いた。秋の草原に行くと目も鮮やかなクジャクチョウが飛び回っていて 楽しませてくれるが、それがまったく見られなかった。キベリタテハはも っと極端で目撃情報も極端に少なくなっていた。 そんな時函館の林道でクジャクチョウがたくさん飛び回っているのを見 てびっくりした。本州では姿を消しているのに北海道ではどうしてこんな にたくさんはっせいしているのだろう。不思議としか言いようがなかった。 クジャクチョウは昨年あたりから少し見られるようになってきた。今年は かなり復活傾向にあるようで、草原では美しい姿があちこちでいられる ようになった。うれしいことだ。 キベリタテハも早く復活して欲しいと思う。 |
クジャクチョウ (2017年7月15日 北海道函館市) |
クジャクチョウ (2017年7月15日 北海道函館市) |
クジャクチョウ (2017年7月21日 北海道千歳市) |
クジャクチョウ (2008年7月15日 北海道札幌市) |
クジャクチョウ (2012年8月29日 長野県上田市) |
クジャクチョウ (2012年8月28日 長野県小諸市) |
クジャクチョウ (2009年7月27日 北海道上川町) |
(2006年9月2日 長野県湯の丸高原) |
クジャクチョウ (2010年8月8日 長野県小諸市) |
みちのくのヒメギフチョウを求めて、仙台まで出かけた。 林道沿いの雑木林の中はカタクリが満開だった。 それこそ何千株というカタクリが咲き乱れ、薄紫色の花 を競い合っている。 秋のクジャクチョウは華やかな高原の花々がよく似合う 蝶だが、越冬後のクジャクチョウは林道を行ったり来たり ただひたすら太陽を求めている。 こんなにいっぱいカタクリが咲いているというのに、そこに やって来ることはない。 華やかな宴席に芸者さんはぴったりの存在だが、最近は ミニスカートのコンパニオンの方が幅をきかせている。 酒を注いで、カラオケを歌って、ご機嫌を取るのはもっぱら 客の方だ。 歳老いた芸者さんはそんな席でもいやな顔ひとつせず、控 えめにニコニコとしている。 時に、背筋をピンと伸ばして、三味線を手に取ると宴席の 視線が一気に集まる。幅広い教養、達者な芸、軽妙な語り 口、どれをとっても若いコンパニオンには無いものだ。 冬を越して、春の林道を行き来するクジャクチョウには、凛 とした”芸者”の姿を感じさせる残り香がある。 |
越冬後のクジャクチョウ (2008年4月15日 宮城県仙台市) |
越冬後のクジャクチョウ (2013年5月26日 北海道中札内村) |
クジャクチョウ (2014年7月8日 北海道苫小牧市) |
クジャクチョウ (2015年7月19日 長野県上田市) |