ヤクシマルリシジミ

ヤクシマルリシジミ

ヤクシマルリシジミ♂
（２００５年６月２５日　　屋久島）

　　　観光で上高地や白神山地を訪れたことはあるが、なん
　　　と言っても屋久島の自然が一番だと思う。

　　　屋久島には数年前チャレンジしたが、ちょうど台風と
　　　ぶつかり、鹿児島から引き返したことがある。

　　　それだけに再度の挑戦は思い出深く、素晴らしい旅に
　　　なった。

　　　悠々と生きつづけている屋久杉の感動、白谷雲水峡の
　　　自然、大川（おおこ）の滝の雄大さ、満天の星空の下
　　　観察した海がめの産卵など、どれも思い出に残る。

　　　白谷雲水峡を上っているとき、大きな岩のところで
　　　休憩をとった。ガイドさんはそこでお湯を沸かし、コ
　　　ーヒーをいれてくれた。

　　　そのとき渓流沿いにちらちら飛ぶ小さな蝶がいた。

　　　「ヤクシマルリシジミです」
　　　ガイドさんは得意そうに言った。

　　　通称ヤクルリは本州にも生息しているのだが、なぜか
　　　この白谷雲水峡がぴったりのような気がした。

　　　ちょこっとだけ羽からのぞいたブルーの色がとても鮮
　　　やかだった。

　　　心づくしのコーヒーが何ともおいしかった。

ヤクシマルリシジミ
（２０１６年９月２６日　徳島県海陽町）

　歌舞伎役者、市川海老蔵さんの妻、小林麻央さんのブログをよく見る。
　その度に胸を打たれ、じんとくる。一度だけコメントさせて頂き、励まし
　のメッセージを送った。
　麻央さんは乳がんが肺と骨に転移し、ステージ４だと告白している。抗
　がん剤の副作用も強く、腕が動かなくなるなど苦しい日常を語っている。

　僕の妻も大腸がんと闘病している。がんは大腸壁を突き抜け、小腸壁
　に達していた。ステージは３だったが、「実際は４に近い３です」と医師か
　ら告げられた。
　医師は手術後抗がん剤の使用を強く勧めた。僕は別の病院で胃がん
　の手術を受けたばかりで、主治医の先生に妻のことを相談すると、「私
　の妻だったら、当然抗がん剤を使わせます」と言った。夕方、看護婦さん
　から自宅に電話があり、親切にも僕と主治医のやりとりを説明して、抗が
　ん剤の使用を説得してくれた。

　妻は抗がん剤の使用を頑として受け入れなかった。手術後体力が弱っ
　ているところに抗がん剤を使えば、私がダメになってしまう、という勝手な
　論理だった。先生は呆れたように「再発しても自己責任ですよ」と言った。

　それから４年、これまでのところがんの再発・転移はなく日常生活は支障
　なく送れている。

　がん患者の生と死の分かれ目は微妙で、むつかしい。抗がん剤を拒ん
　でがんが再発、命を落とす人も多いと思う。妻のような奇跡的なことも中
　にはある。
　小林麻央さんの奇跡を心から祈りたい。