アサギマダラ
アサギマダラ (2012年8月7日 長野県佐久穂町) |
アサギマダラは渡りをする蝶として知られている。 中には2000キロを飛ぶものもあるというから驚く。 高原の明るい樹林帯の花などに群れているアサギマダラは とても美しく、いつ見ても見飽きることがない。 飛び方は優美でゆったりとしている。 しかし、なにかに驚いたりすると、ひらりと敏捷に身をかわし 天空高く飛び去ってしまう。 高原などで取り逃がして、青空をバックにどこまでも高く舞 い上がるこの蝶の美しさに魅了された少年は多いに違い ない。 最近はアサギマダラにサインペンでマーキングをして渡りを 調査することが盛んになってきた。インターネットの普及で、 福島県でマーキングされた個体が九州で再捕獲されたり、 その飛翔力のすごさが次々報告されるようになってきた。 でも、なんでもかんでもマーキングするより、自然の花々の 周りを優美に舞うアサギマダラをのんびり眺めている方が ぼくは好きだ。 |
アサギマダラ (2020年10月22日 千葉県船橋市) |
アサギマダラ (2020年10月22日 千葉県船橋市) |
朝10時過ぎ、なんとなく胸騒ぎがした。庭に出てみるとフジバカマに アサギマダラが来ていた。途端に心臓が高鳴った。あわててカメラを 取りに戻る。その間もアサギマダラは悠然とフジバカマで吸蜜してい た。 「今年もやって来てくれた」。うれしさに心臓がバクバクする。何枚も シャッターを切った。 庭のフジバカマは6年前に植えた。アサギマダラが旅の途中何とか 我が家にも立ち寄ってくれないかという淡い期待からだった。なか なか期待通りにはならなかったが、2018年についに1頭のアサギ マダラがやって来た。10月30日の午後3時頃のことだった。買い物 から帰って来た妻が気付き知らせてくれた。「えーっ」と飛び出した。 それ以来の2度目の訪問だ。 カメラを構えて何やらやっていると近所の奥さんと通りがかった奥さん が「なんですか」と聞いて来た。「この蝶はこれから2000キロ近く旅を するんですよ」とか得意げに講釈を垂れる。奥さん方も「きれいな蝶で すね」「そんな蝶がいるんですか」と感心する。 アサギマダラは2時間近くフジバカマで吸蜜したり、ちょっと休息したり、 軽く飛んだりして楽しませてくれた。 どこから来たんだろう。千葉は旅のルートからははずれている?のに どうして我が家に立ち寄ったのだろう。これからどこにいくのだろう。 やがてどこかへ飛び去って行くアサギマダラを見送りながら、元気で旅 を続けるんだよ、と応援の声をかけたのだった。 (2020年10月22日) |
アサギマダラ (2019年9月2日 長野県南佐久郡) |
アサギマダラ (2006年8月7日 長野県入笠山) |
アサギマダラ (2017年8月20日 長野県諏訪市) |
アサギマダラ (2012年8月28日 長野県東御市) |
2017年の歌会始のお題は「野」だった。 皇居・宮殿「松の間」で行われた歌会始では、国文学者の久保田淳さん が独特の節回しで歌を詠みあげ、その風雅な雰囲気はとてものどかで 素晴らしかった。 天皇陛下のお歌は那須御用邸で静養中、夜間に「邯鄲(カンタン)」の鳴 き声を聞かれた時のことを思い起こされたものだった。 一般の応募は2万205首あったという。その中から10首が選ばれてい た。新聞で入選歌を読みながら、「あっ、これこれ」と思わず、顔がほこ ろんでしまった歌があった。 上田国博さん(81)の 歩みゆく秋日ゆたけき武蔵野に 浅黄斑蝶の旅を見送る という1首だ。 浅黄斑蝶はもちろんアサギマダラのこと。どこか東北あたりで夏を過ごし たアサギマダラが秋になって渡りを始め、武蔵野のどこか、野川公園あ たりなのだろうか、ちょっと一休みして、また、南下を始める。 これからの数千キロの旅が無事であるようにと祈る、歌い手の優しさが 浮かんで来る。とても素晴らしい歌だった。 |
アサギマダラ (2017年8月27日 群馬県嬬恋村) |
アサギマダラ (2017年8月27日 群馬県嬬恋村) |
アサギマダラ (2017年8月27日 群馬県嬬恋村) |
アサギマダラがついに我が家にやって来た。午後3時前だった。ムラ サキシジミの撮影から帰って、ブログを作り栗羊羹を食べながらお茶 を飲んでいた。のんびりしていた。その時、妻が買い物から帰って来た。 「おとうさん、おとうさん、アサギマダラ」と玄関から大声が聞こえた。 「えーっ」とカメラを持ってあわてて庭に飛び出した。老夫婦の大騒動 にびっくりしたのか、僕が庭に出た時はアサギマダラはフジバカマか ら飛び立ち、家の屋根の方に飛んでいた。「あーっ、あっ」と声にもな らない声が上がった。 10分くらいするとアサギマダラが戻って来た。 家の前の道路を2、3回旋回して庭には入らずに消えて行った。「ダメ だねえ。」とがっくりしていると「また、来るわよ」と妻が言う。 3時半過ぎ、僕が手紙を書いていると、窓から外を見ていた妻が「来 た、来た、早く」と大声で叫んだ。 あわてて庭に飛び出ると、アサギマダラがフジバカマで吸蜜していた。 デジカメを構えて2回シャッターを切ると、敏感になっていたアサギマダ ラはすぐに飛び立ってしまった。それでも記念すべき我が家の庭のア サギマダラの写真が2枚撮影出来た。 フジバカマは4年前、アサギマダラの立ち寄りを期待して植えた。しか し、なかなかアサギマダラの訪問がなかった。千葉が渡りのルートで はないからかな、と思って半ばあきらめていた。 1週間前、僕が本屋で「ジーヴスの事件簿」を買って帰って来ると、家 から50メートルほどのところでばったりアサギマダラと出会った。 「あれ」と思った。これはきっと我が家で休息していたのでは、と確信に 近い思いがあった。 それが本当になった。ついにアサギマダラがや って来た。ありがとう、アサギマダラさん!! (2018年10月30日) |
アサギマダラ (2018年10月30日 千葉県船橋市・自宅庭) |
アサギマダラ (2017年8月27日 群馬県嬬恋村) |
アサギマダラ (2016年8月7日 長野県東御市) |
アサギマダラ (2016年8月7日 長野県東御市) |
アサギマダラ (2016年8月7日 長野県東御市) |
アサギマダラ (2012年8月28日 長野県小諸市) |
アサギマダラ (2012年8月7日 長野県佐久穂町) |
アサギマダラ (2006年8月7日 長野県入笠山) |
大菩薩峠から下山して「福ちゃん荘」に立ち寄った。 カキ氷と冷やしトマトを食べて、あわよくば、キベリタテハ でも飛んでこないかと粘っていた。 キベリは来なかったが、アサギマダラがふわりと現れ、 悠然と飛翔し、カラマツの高い枝先にちょこんと止まって くれた。 逆光の光線に、翅を広げ、下から見るととても美しい。 望遠をいっぱい伸ばしてシャッターを切ってみたら、なん とか撮影できた。 記録的な猛暑で、この日の大菩薩峠は蝶影が記録的に 薄く、成果がなくてがっかりしていたが、最後にアサギマ ダラが慰めてくれた。 蝶の神さまのプレゼントなのだろう。 (2007年8月27日 山梨県大菩薩峠) |
アサギマダラ (2008年10月12日 千葉県千葉市) |
10月も半ばを過ぎると、蝶の季節も終わりに近づいてくる。 きょうも我が家の庭でツマグロヒョウモンが1頭羽化したが、 スミレが十分でなかったのか、心もち小さめの蝶だった。 ユキヤナギにしがみつき、やがて翅が伸びると元気よく飛び 立っていった。 秋の蝶を見に行こう。そう思って近くのフィールドに出かけた。 夏以降忙しく、久しぶりの観察だった。 向こうにふわりと飛ぶ蝶が目に入った。アサギマダラだった。 千葉ではぼくは初めての出会いだった。房総の先の海岸では スナビキソウに集まることが報告されているが、船橋や千葉で の目撃例は数少ない。 アサギマダラは春先は北上し、秋になると南下することが知ら れている。福島や北関東あたりから九州や沖縄にまで渡る例 もある。 この蝶も渡りの途中なのだろう。 ひとりぼっちでどこからどこへ向かうところなのだろうか。 黄色い野の花でひと休みすると、アサギマダラはまた、ふわり と飛び立つとどこかへ飛んで行った。 「迷子になるなよ」 林の向こうに消えて行くアサギマダラにそう声をかけたのだった。 |
アサギマダラ (2008年10月12日 千葉県千葉市) |
アサギマダラ (2017年8月27日 群馬県嬬恋村) |
アサギマダラ (2015年10月1日 高知県室戸市) |