タカネヒカゲ
タカネヒカゲ (2015年7月21日 長野県北アルプス) |
タカネヒカゲ (2015年7月21日 長野県北アルプス) |
ガン闘病中で体調もあまり良くなく、74歳という高齢もあって、北アル プスに棲むタカネヒカゲと会うことはもうないだろうなと思っていた。 夏の初め、息子が「ついて行ってあげるからもう一度チャレンジしてみ たら。ダメだったら引き返せばいいんだし」と言ってくれた。そんな言葉 に後押しされて北アルプスに挑戦することになった。 もう40年前のことになる。小学校3年生だった長男と幼稚園児の次男 を連れて、上高地から蝶が岳に登ったことがある。頂上から見る穂高の 大展望にしばし見とれた記憶がある。それから40年、息子もそろそろ 50歳に近い。 アルプス初心者が無謀な挑戦をして大丈夫なのだろうか。 朝の5時半、登山口から登り始めた。カメラや望遠レンズなど重いもの は全部息子が持ってくれた。ゆっくりと登る。5時間かかるところ、7時 間でいいと考えた。石のゴロゴロした歩きにくい登山道が続く。長雨の影 響か、水が流れ、沢のようになっているところもある。 標識に「あと500メートル」とあった。 よし、もう少しだ。しかし、ここからがつらかった。喘ぎ喘ぎ、一歩ずつ、 休み休み登る。 そしてついに…。目の前にアルプスの山脈がぱあっと広がった。 大感激だった。目の前に槍ヶ岳が凛とそびえ立っていた。 大パノラマを見た瞬間、辛い思いをして登って来てよかったと思い、後 押ししてくれた息子に感謝した。 |
ハイマツで就寝中のタカネヒカゲ (2015年7月21日 長野県北アルプス) |
タカネヒカゲ (2015年7月21日 長野県北アルプス) |
タカネヒカゲ (2015年7月21日 長野県北アルプス) |
タカネヒカゲ (2015年7月21日 長野県北アルプス) |
タカネヒカゲ (2015年7月21日 長野県北アルプス) |
タカネヒカゲ (2015年7月21日 長野県北アルプス) |
頂上下の砂礫地にタカネヒカゲが舞っていた。止まっているときはまっ たく分からない。時々飛び立つのを目をこらして追う。あそこに止まった と近づいていくが、それでもなかなか分からない。 近づくと、とても敏感ですぐに逃げてしまう。 僕はつらい登山で体力を消耗して、何カットか撮影すると、山小屋で休 みたかった。「休憩しようよ」と息子に言うと、「いや、撮影できる時はや っておいた方がいいよ。山の天気は分からないから」と言われた。 風もなく、穏やかな晴天である。 それでも1時間以上、重いカメラを抱えてまた、タカネヒカゲの撮影に没 頭した。 昼も過ぎていたのでやっと山小屋のテラスで昼食を摂った。コンビニで 買ったおにぎりがあったので僕はそれを食べた。息子はラーメンを頼 んだ。テラスから見る槍ヶ岳は素晴らしく、「このラーメンはうまい」と息子 もご機嫌だった。ラーメンは900円、コーヒーは450円だった。 1時間ほど休憩してまた、タカネヒカゲの観察に出た。 しかし、風が強く、気温も急に低くなっていた。さっきまで晴天だったのに 雲も大分出て来ている。 こうなるとどこを探してもタカネヒカゲは見つからなかった。 ハイマツのどこかに潜り込んでしまったのだろうか。さっき頑張って撮影 を続けておいてよかった。 タカネヒカゲは日本で一番高い所に生息する高山蝶である。北アルプス などのほぼ3000メートル級の山にしか生息しない。 翌朝、日の出の後、6時半から探してみた。まだ風は強く、寒かった。 ハイマツや砂礫地を探したがいなかった。やっとハイマツに潜って寝て いる個体が見つかった。 7時半になって風も少しおさまり、気温が上がって来ると砂礫地の岩の 上や枯れ枝に止まって日光浴する姿が見られ始めた。 でも、8時過ぎには下山しなければならない。 もう2度と来ることはないアルプスとタカネヒカゲに後ろ髪を引かれるよう な思いで、山を下りる準備を始めた。 |
タカネヒカゲ (2015年7月21日 長野県北アルプス) |
タカネヒカゲ (2015年7月20日 長野県北アルプス) |
タカネヒカゲ (2015年7月20日 長野県北アルプス) |
タカネヒカゲ (2015年7月20日 長野県北アルプス) |
タカネヒカゲ (2015年7月20日 長野県北アルプス) |
タカネヒカゲ (2015年7月20日 長野県北アルプス) |
タカネヒカゲ (2015年7月20日 長野県北アルプス) |
タカネヒカゲ (2015年7月20日 長野県北アルプス) |
タカネヒカゲ (2015年7月20日 長野県北アルプス) |
タカネヒカゲ (2015年7月20日 長野県北アルプス) |
タカネヒカゲ (2015年7月20日 長野県北アルプス) |