ベニヒカゲ


 ベニヒカゲ♀
ベニヒカゲ♀
(2018年8月14日 長野県小諸市)
 
ベニヒカゲ♀
(2018年8月17日 長野県湯の丸山)
 朝のNHK俳句を見ていたら兼題は「秋の蝶」だった。
 良い句がたくさんあったが、その中で目に留まったのは「野の色の深き
 に沈む秋の蝶」(陌間みどり)という句だった。

 ベニヒカゲを観察に訪れた高原はお盆だというのに肌寒く、気温は15
 度を下回っていた。曇り空が少し切れて青空がのぞくと、ベニヒカゲが
 飛び出したが、また曇ると草むらにさっと隠れてしまう。葉をかき分けて
 覗き込むと、さらに巧みに草むらに潜り、いくら探しても見つからない。
 まるで”葉隠の術”のようで不思議だった。

  ベニヒカゲのメスは翅の裏の後翅に明瞭な帯があってオスと区別出来
 る。白い帯のものと黄色い帯のものがあるが遺伝的な形質のようだ。

 「秋蝶や良くも悪(あし)くも生き延びぬ」(阿由葉年雄)というのも心惹か
 れた。ベニヒカゲを観察しながら、我が身と重ね合わせこの夏も何とか
 生き延びたなあと思ったのだ。 

 今年は蝶の暦の歩みが早い。いつもは9月になっても姿が見られるベ
 ニヒカゲもお盆過ぎには終盤を迎え、痛んだ個体が多くなっていた。
 どこか寂しい秋の訪れだ。
 ベニヒカゲ♀
ベニヒカゲ♀
(2019年8月21日 長野県小諸市)
 ベニヒカゲ
ベニヒカゲ♀
(2019年8月21日 長野県小諸市)
ベニヒカゲ♀
ベニヒカゲ♀(黄帯型)
(2019年8月21日 長野県小諸市)
 
 ベニヒカゲ♂
ベニヒカゲ♂
(2019年8月21日 長野県小諸市)
 ベニヒカゲ♀
ベニヒカゲ♀
(2019年8月21日 長野県小諸市)
 ベニヒカゲ交尾
ベニヒカゲ交尾
(2019年8月21日 長野県小諸市)
 ベニヒカゲ♀(白帯型)
ベニヒカゲ♀(白帯型)
(2018年8月14日 長野県小諸市)
ベニヒカゲ♀(黄帯型)
ベニヒカゲ♀(黄帯型) 
(2018年8月14日 長野県小諸市)
 ベニヒカゲ♀(右)と♂(右)
ベニヒカゲ♀(右)と♂(左)
(2018年8月14日 長野県小諸市)
 ベニヒカゲ♂
ベニヒカゲ♂
(2018年8月17日 長野県小諸市)
ベニヒカゲ
ベニヒカゲ♂
(2009年7月27日 北海道上川町)
  層雲峡近くの国道沿いに赤い花が咲き乱れていた。

  コウリンタンポポ(紅輪蒲公英)だ。

  タンポポという名が付いてはいるが、タンポポの仲間ではない。

  もともとヨーロッパ原産の植物で、明治時代に観賞用に栽培
  されていたものが野生化したと言われている。北海道のもの
  は樺太からの引揚者が持ち込んだという説もある。

  北海道、東北など寒冷地を好むようだ。

  戦後樺太からは30万人以上の人たちが北海道に引き揚げて
  来た。しかし、内地での生活は酷薄を極めたといわれている。

  あれから60年の歳月が流れているが、苦しみを乗り越え引揚
  者たちは北海道の大地にしっかり根を下ろして生活している。

  コウリンタンポポを見るとそのことを思うのだ。

  赤いコウリンタンポポにベニヒカゲが止まっていた。
  本州の高山で見るマツムシソウに止まるベニヒカゲも風情があ
  るが、このベニヒカゲには風雪の歴史を感じざるをえない。
ベニヒカゲ
ベニヒカゲ♂
(2018年8月5日 長野県中央アルプス)
 
ベニヒカゲ
ベニヒカゲ♂
(2018年8月5日 長野県中央アルプス) 
ベニヒカゲ
ベニヒカゲ♂
(2018年8月5日 長野県中央アルプス) 
ベニヒカゲ
ベニヒカゲ♂
(2017年7月23日 北海道上川町) 
 ベニヒカゲ
ベニヒカゲ♂
(2017年7月23日 北海道上川町)
ベニヒカゲ
ベニヒカゲ♂
(2014年9月15日 山梨県北杜市)
 
 天皇、皇后両陛下のパラオご訪問が検討されている。
 両陛下の南方地域慰霊の旅は平成17年のサイパンに続き2度目の
 ことになる。サイパンの万歳クリフで深く頭を垂れる両陛下の姿は国
 民に深い感銘を与えた。

 今からちょうど70年前の今日、昭和19年9月15日、4万人を越すア
 メリカ軍がペリリュー島(パラオ共和国)に上陸した。1万人の日本軍
 は徹底的に抗戦し、当初は「3日あればこの小さな島を陥落させる」と
 言っていた米軍だったが、激戦は2か月に及び、2000人を超す死者
 と多大な損害を被った。

 日本の死者は1万人に及んだ。元芸者だった女性も銃を持って戦闘
 に加わり、ペルリューのジャンヌダルクという秘話もある。

 ペルリューに女性兵士の墓ひとつ 

 その9月15日、僕は清里にいた。朝、近くの草原に立ち寄ってみると
 ベニヒカゲが寒さに震えるようにしていた。気温は13度だった。

 こんな遅い時期にまだ新鮮なベニヒカゲがいるのは不思議な気もした。
 70年前のペルリューのこともちょっと思い出しながら、シャッターを押
 した。
ベニヒカゲ
ベニヒカゲ♂
(2014年9月15日 山梨県北杜市)
 
ベニヒカゲ
ベニヒカゲ♂
(2006年9月2日  長野県湯の丸高原)

   「富士には月見草がよく似合う」と言ったのは太宰治だったが、
   蝶にはマツムシソウ(松虫草)の方が似つかわしい。

   晩夏から初秋の高原にこの花が咲き始めると、クジャクチョウ
   やエルタテハ、シータテハ、ちょっと飛び疲れたヒョウモン類が
   集まっている。

   ここ数年気象がどこかおかしい。
   滝のような雨が降ったり、気温も連日30度を超す酷暑が続く。
   我家は僕が胃ガンの手術を受け、1年も経たないのに今度は
   妻が大腸ガンの手術を受けた。

   この暑さはとても耐えられない。
   高原で静養しようと湯の丸高原に出かけた。

   小さな湿原はヤナギランが終わって、マツムシソウやアキノキリ
   ンソウが咲いていた。

   秋の高原にベニヒカゲが舞っていた。
   少し痛んではいるが、可憐な舞いは秋の草原にとても良く似合う。

   僕も妻もリハビリ中の体がゆったりと休まる気がした。
   
ベニヒカゲ
ベニヒカゲ♀
(2017年8月27日 長野県小諸市) 
ベニヒカゲ
ベニヒカゲ♂
(2017年8月27日 長野県小諸市)
 
ベニヒカゲ
ベニヒカゲ♀
(2017年8月27日 長野県小諸市)
 
ベニヒカゲ
ベニヒカゲ♀(白帯型)
(2017年8月27日 長野県小諸市) 
ベニヒカゲ
ベニヒカゲ♂
(2012年8月28日 長野県小諸市)
 
ベニヒカゲ
ベニヒカゲ
(2012年8月28日 長野県小諸市)
 ベニヒカゲ
ベニヒカゲ♂
(2016年8月7日 長野県東御市)


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