ウスバシロチョウ


ウスバシロチョウ
ウスバシロチョウ
(2011年5月15日 山梨県大月市)
 
   藤田嗣治夫人の君代さんの訃報が新聞に載っていた。

   日本人の画家で藤田ほど成功し、世界に名を知られた画家は
   いない。第1次世界大戦の後のパリで藤田の描く「乳白色の肌」
   は熱狂的な絶賛を博した。

   パリの社交界の中心にあって毎晩のように乱痴気騒ぎのように
   踊りまくり、藤田はあっという間にエコール・ド・パリの寵児になっ
   た。

   しかし、藤田は1滴も酒が飲めず、騒ぎの後はモンパルナスの
   アパートに戻って、毎日朝まで制作に没頭する毎日だった。
   人の何十倍もの努力家だったのだ。

   藤田の最初の妻、登美子は教師だったが、ついにパリに渡るこ
   とはなかった。フェルナンド・バレエ、リュシュー・バドウ、マドレー
   ヌの後、君代夫人は5番目の妻だった。

   藤田の画の魅力は乳白色の肌とそれを彩る細い輪郭線だ。

   ピカソなどを除いてそれまでの西洋画には輪郭線はあまりないが、
   藤田は浮世絵の手法を使い、面相筆を使って絶妙なラインを描
   き出した。

   5月も半ばを過ぎるとウスバシロチョウの季節も終盤に入る。

   美しい乳白色の翅とそれをくっきりと彩る黒いライン。

   藤田の画を見ている思いもするのだった。
 ウスバシロチョウ
ウスバシロチョウ
(2021年4月7日 埼玉県武蔵嵐山町)
 ウスバシロチョウ
ウスバシロチョウ
(2021年4月7日 埼玉県武蔵嵐山町)
中学生になったばかりの頃、何人かの蝶友と文通をしていた。九州や
四国の友人もいた。その中に奥多摩の中学生がいた。5月のある日
「ウスバシロチョウを捕りに来ないか」と誘いがあった。大田区に住ん
でいた僕は蒲田から品川に行き、山手線で新宿、そこから中央線で
立川、さらに奥多摩へと向かった。急行などなく初めての一人での長
い電車の旅に酔ってしまい、途中の駅で休んで何とかたどり着いた。
友人の家は渓谷に面した立派な日本家屋の家だった。少し休み、採
集に出掛けた。ウスバシロチョウはどこにでもいた。蝶友のおじいさん
が一緒だった。道すがら村の人と出会うと皆が腰を曲げて深々と挨拶
する。村の人に愛されている感じが良く出ていた。たくさんウスバシロ
チョウが捕れて幸福だった。後年そのおじいさんは高名な日本画家の
K画伯と知った。

ウスバシロチョウはずっとGWころの蝶と思っていた。ここ数年発生が
どんどん早まっている。それでも4月の初めに発生が始まったと聞い
て驚いた。早速埼玉の公園に出掛けた。コツバメが発生する馬酔木
の公園だ。到着するともう7、8人の方が撮影していた。昨日からかな
り発生が増えたという。
今日は気温が高いせいかなかなか止まらないがムラサキハナナやタ
ンポポなどに時々止まってくれた。 
 ウスバシロチョウ
ウスバシロチョウ
(2022年4月22日 埼玉県武蔵嵐山町)
 ウスバシロチョウ
ウスバシロチョウ
(2019年4月22日 埼玉県武蔵嵐山町)
ウスバシロチョウ
ウスバシロチョウ
(2017年5月4日 埼玉県武蔵嵐山町)
 
ウスバシロチョウ
ウスバシロチョウ
(2017年5月4日 埼玉県武蔵嵐山町) 
ウスバシロチョウ
ウスバシロチョウ
(2016年5月18日 北関東山地)
 
ウスバシロチョウ
ウスバシロチョウ
(2016年5月18日 北関東山地) 
ウスバシロチョウ♂(上)と♀(下)
ウスバシロチョウ♂(上)と♀(下)
(2016年5月18日 北関東山地)
 
ウスバシロチョウ
ウスバシロチョウ
(2012年5月16日 東京都八王子市)
 
 ウスバシロチョウ
ウスバシロチョウ♀
(2015年5月17日 北関東山地)
ウスバシロチョウ
ウスバシロチョウ♀
(2012年5月16日 東京都八王子市)
 
ウスバシロチョウ
ウスバシロチョウ
(2009年5月26日 北関東山地)
黒いウスバシロチョウ
黒いウスバシロチョウ
(2010年5月27日 北関東山地)
ウスバシロチョウ
ウスバシロチョウ
(2009年5月1日 東京都裏高尾)

   ゴールデン・ウイークの頃、高尾山や奥多摩にハイキング
   に出かけると、この白い、美しい蝶に出会う。
   ふわふわと飛び、道路沿いの草むらのヒメジョオンの花や
   畑のネギボウズに止まっていたりする。

   裏高尾の林道はこの蝶のかっこうの発生地になっていた。
   大きな捕虫網を持った虫屋さんが何人もいたが、この蝶に
   は関心がないのか、見向きもされなかった。

   じっと観察していると、草むらの中に潜り込んで、なにや
   らごそごそしている。何をしているのかと思ったら、尻尾
   を器用に曲げて卵を産んでいるのだった。

   ウスバシロチョウの食草はムラサキケマンだが、食草には
   直接産卵せず、近くの枯れ枝や枯草に産み付ける。
   青い空、空にはひばり、そのさえずりを聞きながらの観察
   は至福の時間であった。

   ウスバシロチョウはシロチョウ科ではなくアゲハチョウ科にな
   っている。

        (2005年5月21日  東京都裏高尾)
ウスバシロチョウ
ウスバシロチョウ
(2008年5月18日 東京都桧原村)
交尾中のウスバシロチョウ
交尾中のウスバシロチョウ
(2007年5月16日 東京都桧原村)
   野花が咲き乱れる草原にウスバシロチョウがゆったりと舞
   っていた。

   突然オスが飛翔を止めると、草原の中に潜り込んでいった。

   どうしたのかなと思って覗き込むと、そこには羽化したばかり
   のまだ、翅が伸びきっていないメスがいた。

   オスは強引に交尾を迫り、まもなく2匹は愛のカップルになっ
   ていた。

   「あれ、あれ、まだ生まれたばかりの赤ちゃんなのに…」

   無粋だが、あきれてしばらく観察させてもらった。

   羽化したばかりと思い込んでいたが、メスはどうやら羽化不全
   の個体のようだった。時間が経っても翅は一向に伸びず、縮れ
   たままだ。

   羽化不全の個体にまで強引に交尾を迫るオスのエネルギーに
   あきれてしまった。
交尾を迫るウスバシロチョウ
交尾を迫るウスバシロチョウ
(2008年5月6日 東京都八王子市)
 
飛翔するウスバシロチョウ
飛翔するウスバシロチョウ
(2013年5月8日 東京都裏高尾)
 蝶のブログをあれこれ見ていると、最近は蝶の飛翔写真がよく掲載
 されている。どれも素晴らしい写真で、よくまあ、こんな瞬間をキャッ
 チできるなあ、と感心することが多い。
 ぼくはカメラも素人だし、運動機能も歳相応に鈍いので、これまで飛
 翔写真に挑戦したことはなかった。

 ゴールデンウィーク明け、裏高尾に出かけた。ほんとは黒いアゲハが
 目的だった。あわよくばミヤマカラスアゲハに出会えればという期待
 もあった。だが、肝心のアゲハは今年は物凄く少なかった。

 がっかりして腰を下ろして休んでいると、ウスバシロチョウが何頭か
 飛んでいた。何気なくカメラを向けて写真を撮っていたら、そのうち
 の一枚にウスバシロチョウの飛ぶ写真が写っていた。

 偶然の産物である。 
 ウスバシロチョウ
ウスバシロチョウ
(2014年5月9日 北関東山地)
 ウスバシロチョウ
ウスバシロチョウ
(2014年5月9日 北関東山地)
 ウスバシロチョウの交尾
ウスバシロチョウの交尾
(2014年5月9日 北関東山地)
 ウスバシロチョウ
ウスバシロチョウ
(2015年6月16日 北海道上川町)

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