モンキアゲハ


 モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2014年5月7日 神奈川県横浜市)
  
  蝶を季題にした俳句はいくつかあるが、その中でこれはきっと
  モンキアゲハだろうなと思う句がある。

  「鎌倉やことに大きな揚羽蝶」(桂信子)
  「女学院前にて揚羽見失う」(浅井一志)

  どちらも作者はモンキアゲハだなどと知ってはいない。多分、黒
  いアゲハチョウが飛んでいるという感覚だろうと思う。

  でも、どちらもぼくにはモンキアゲハが目に浮かぶのである。

  古都の境内なのか、あるいは谷戸なのだろうか。悠然と白い帯
  をきらめかせながら飛ぶ黒い大きなアゲハ。

  モンキアゲハが悠然と飛んでいく。それを目で追っていると、晴
  れやかな笑顔の女子高生が賑やかに校門から現れた。つい、そ
  の姿に見とれているうちに、気づくとモンキアゲハはどこかへ消え
  ていた。

  俳句としてはこなれていないが、女学院前と揚羽というのが気に
  入っている。

  白い帯が印象的なこの蝶は南方系の明るさを湛えている。女学
  生の明るさとどこか通じるものがある。

  東京近辺では三浦半島や房総半島に比較的多いが、最近では北
  上が話題になっている蝶のひとつでもある。
 モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2021年9月24日 千葉県南房総市)
モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2023年9月11日 千葉県南房総市)
 
 モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2023年9月11日 千葉県南房総市)
 
モンキアゲハ
 モンキアゲハ
(2023年9月11日 千葉県南房総市)
モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2020年8月8日 東京都港区)
 
 モンキアゲハ集団吸水
モンキアゲハの集団吸水
(2021年5月14日 埼玉県越生市)
モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2021年5月14日 埼玉県越生市) 
モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2020年8月8日 東京都港区)
 
モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2020年8月8日 東京都港区)
 
モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2017年5月19日 北関東山地)
 
モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2017年4月12日 沖縄県名護市)
 
モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2017年4月12日 沖縄県名護市)
 
モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2015年5月17日 北関東山地)
 
 蝶友というより蝶の師匠のようなTさんは長年ガンと闘病生活を送って
 いる。だから、ぼくは”弟子”でもありガン友ということになる。

 ぼくとちがって多趣味な師匠はさまざまなことにチャレンジして前向きに
 人生をおくっている。コーラスもそのひとつだ。こどものころから1回聞く
 と頭の中に音符が刻み込まれるという天賦の才能に恵まれている。

 音感教育など受けていないがどんな曲もすぐ歌えてしまう。モーツアルト
 のようなひとなのだ。それがガンの転移のせいでテノールの発声が出来
 なくなり、残念なことに最近は歌えなくなってしまったという。

 そんな体調でも日々の自然観察は欠かさない。「薬の副作用でひどい
 下痢と便秘の繰り返しで辛い日もあるんだ」と話す。

 お互いガンの闘病のことも知りたいと2年ぶりに師匠のところに押しか
 けた。ちょうど野アザミの咲く季節で、時々モンキアゲハやカラスアゲハ
 が花にやってくる。

 陽射しを避けて木陰に座って話し込む。

 アザミにやってくる蝶を見ていると不思議と気持ちが和らいでつらいガン
 闘病のことを忘れてしまう。

 別れ際「前向きに生きて人生を楽しみましょうよ」と師匠が言った。
 パワーを貰ったような気がして元気が湧いてきた。
モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2015年5月17日 北関東山地)
 
モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2015年4月26日 東京都文京区)
 
 モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2014年5月7日 神奈川県横浜市)
モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2014年5月7日 神奈川県横浜市)
 
モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2010年5月27日 北関東山地)
モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2010年5月27日 北関東山地)
モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2010年5月27日 北関東山地)
モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2005年6月26日  屋久島)

   大分前のことだが、小学生だった息子と甥を連れて
   三浦半島の鷹取山に出かけた。

   たしか5月頃だったと思うが、ハンミョウが迎えて
   くれて、「道しるべって言うんだよ」と教えると、息
   子と甥はおもしろがって観察をしていた。

   す〜いと飛んで、数メートル先に止まる。追いつく
   と、また、す〜いと前に飛んでいく。

   こどもたちはそれがおもしろくて仕方がないようだ
   った。

   そのとき、黒いアゲハが前方から悠々と飛んできた。

   息子たちは「あっ、あっ…」と声にならない声をあ
   げて持っていた捕虫網を夢中で振り回す。がちゃん
   とふたつの網がぶつかって、黒いアゲハはするりと
   逃げていった。

   そして、しばらくするとそのアゲハは、なにごとも
   なかったように悠々と戻って来た。

   「がちゃーん」

   また、網と網がぶつかりあう。黒い蝶は白い紋をひ
   らめかしながら、舞い上がった。

   そこはモンキアゲハの蝶道になっているようだった。
   しばらく待っていると、黒い蝶が何頭も悠然と姿を
   みせる。

   捕虫網を何度もぶつけながら、やっと最初のモンキ
   アゲハを甥が捕まえた。

   白い網の中でばたばた暴れる黒いアゲハ。

   「取ったよ。叔父さん」
   「すごいねえ。それモンキアゲハっていうんだよ」

   甥は網の中でやっとモンキアゲハを捕まえた。甥
   の小さな指にはさまれたモンキアゲハは黒々と輝
   き、ちょっと黄色がかった大きな大きな白い紋が
   あった。

   甥のうれしそうな笑顔が今も忘れられない。
 モンキアゲハ
モンキアゲハ
{2011年10月19日 沖縄・久米島)
モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2011年10月19日 沖縄・久米島)
 
 この蝶も温暖化で北上を続けている。
 最近は栃木県や福島県などでも見られるようだ。

 黒い翅に大きな白い紋があって、飛び方は雄大だ。だから、南方系の
 蝶のイメージが強いが、意外にも石垣島や西表島ではほとんど見るこ
 とは少なく、迷蝶扱いされている。

 しかし、沖縄では数が多く、久米島でもジャコウアゲハやベニモンアゲハ
 に混じって、白い紋を悠々となびかせながら花から花を飛んでいた。

 センダングサはあまり好きではないらしく、ランタナの花に多く集まって
 いた。

 10月の久米島は素晴らしかった。
 天気には恵まれなかった。風も強く、蝶の観察には快適とはいえないの
 だが、林道に入ると陽だまりに蝶たちが遊ぶ姿が見られた。

 妻はガンと闘病中のぼくを気遣って、「あんまり、無理しないでね」と何度
 も声をかけてくれるのだが、ぼくはモンキアゲハが飛んでくるたびに駆け
 足で追いかけてしまうのだった。
 
モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2017年9月24日 千葉県鴨川市)
 
モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2014年10月18日 沖縄県国頭村)
 
 モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2016年4月20日 東京都文京区)
モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2016年4月20日 東京都文京区)
 
 モンキアゲハ
モンキアゲハ
(2016年4月20日 東京都文京区)


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