ヒメギフチョウ


 ヒメギフチョウ
ヒメギフチョウ
(2015年4月18日 長野県朝日村)
 久しぶりの快晴だった。
 安曇野は春爛漫、さくらが競うように咲き誇っていた。のどかで穏やか
 で日本の原風景を見ているようで心が落ち着くのだった。

 息子たちが桜を見に行こうと誘ってくれた。高速の渋滞が心配だったが
 とてもスムースで楽だった。

 時間が少しあったので、安曇野に直行する前にヒメギフチョウを観察す
 ることになった。まだ朝9時前だったが、桜の梢にヒメギフチョウが美し
 く舞っていた。桜の下にはカタクリの群落がある。

 しばらくするとヒメギフチョウが次々やって来た。のどかで美しい風景だ。

 1時間ほど堪能して安曇野に向かった。
 午後2時頃で風も少し強くなってきたが、渓谷を20分ほど歩くと雑木林
 の中のカタクリの群落にヒメギフチョウたちが遊んでいた。

 まだ新鮮な個体で発生したばかりのようだった。
 ここは実は明日の朝来る予定だった。ちょっと無理して息子たちに頼ん
 で来てもらったのだが、翌日は天気が急変朝から曇り空だった。

 ヒメギフチョウを撮影して宿でのんびり風呂に入る。まさに至福の時間で
 息子たちにも感謝したのだった。 (2015年4月)
 ヒメギフチョウ
ヒメギフチョウ
(2021年5月4日 長野県白馬村)
 ヒメギフチョウ
ヒメギフチョウ
(2021年5月4日 長野県白馬村)
 GWの最中、3日から5日まで2泊3日で長野に遠征して来た。3日(月)
は成果なし、5日(水)は朝から小雨だった。楽しめたのは4日(火)だ
けだった。
3日は八ヶ岳のヒメギフチョウを求めて朝早く家を出た。林道に着くと
前日雪が舞ったそうでうっすらと雪が残っていた。おまけにこの日は
寒波が張り出したとかで気温が低く寒かった。昼過ぎまで林道を散策
したが気温は10度に届かず蝶の飛ぶ状況ではなかった。ヒメギフを目
撃も出来なかった。
4日も八ヶ岳周辺に滞在する計画だったが、急遽変更して長野に向か
った。幸いホテルが取れた。
八ヶ岳のペンションで朝食を摂ってから向かったのでヒメギフのポイント
に着いたのは10時半近くだった。有名ポイントなのでもう10人くらいのカ
メラマンがいた。日差しは暖かくすぐにヒメギフが姿を見せスミレで吸蜜
を始めた。今の時期このポイントはヒメギフとギフチョウの両方が見られ
るのだが、今年はギフチョウの姿がまだなかった。
ヒメギフは擦れたものから新鮮なものまでたくさん見られた。昼ころまで
スミレ吸蜜を狙った。その後別のポイントでギフチョウを探したが思わし
くないのでまた戻って来て午後からのカタクリ吸蜜を撮影することにした。
戻った直後桜に来たヒメギフを撮影出来た。残念ながら翅を開かず間も
なく飛び去った。
カタクリはそろそろ終わりだがなるべくきれいなカタクリを狙った。ヒメギ
フが時折やって来た。
3時近くなるとヒメギフは杉の木の梢に消えた。
それにしても今年のギフチョウはどうなったのだろう。今日は「立夏」。もう
カタクリもお終いだ。
5日は朝から小雨だった。ホテルを引き上げ帰宅することにした。
八ヶ岳は残念だったがまあまあの遠征だった。

 ヒメギフチョウ
ヒメギフチョウ
(2019年4月20日 長野県安曇野市)
ヒメギフチョウ
ヒメギフチョウ
(2015年4月18日 長野県朝日村)
 
ヒメギフチョウ
ヒメギフチョウ
(2015年4月18日 長野県安曇野市)
 
ヒメギフチョウ
ヒメギフチョウ
(2015年4月18日 長野県安曇野市)
 
 
ヒメギフチョウ
ヒメギフチョウ
(2018年4月22日 長野県安曇野市) 
ヒメギフチョウ
   蝶の愛好家の中でギフチョウとヒメギフチョウの人気はとても
   高い。春、桜やカタクリ、スミレの開花を待っていたかのように
   羽化し、花々とともにすぐに姿を消してしまう。

   ”春の女神”ともスプリングエフェメラルとも言われ、その美しさ
   とはかなさから心揺さぶられる存在なのだろう。

   黒と黄色のだんだら模様はどちらもそっくりだが、後翅外縁に
   沿う紋列がギフチョウは橙色、ヒメギフチョウは黄色などの違い
   がある。

   食草もギフチョウはカンアオイ、ヒメギフチョウはウスバサイシン
   と違っている。

   産地保護のため、撮影データはあえて記載しないが、雪解けの
   やっと雪の消えた山の斜面などを飛ぶヒメギフチョウの美しさ
   は例えようがない。
ヒメギフチョウ
ヒメギフチョウ
   ことし(2008年)はスエーデンの生物学者リンネの生誕100年
   にあたる。リンネは動植物の分類の基礎として学名を提唱した
   学者でもある。

   ギフチョウの学名は「Luehdorfia japonica Leech. 1889」
   ヒメギフチョウは「Luehdorfia puziloi (Erschoff 1872)]と
   なっている。

   属名のLuehdorfiaというのはウラジオストックの近くでこの蝶を
   最初に採集したリュードルフに因んでつけられた。

   ギフチョウとヒメギフチョウはお互いに棲み分け、その分布の境
   界線をリュードルフィア・ラインと呼んでいる。

   しかし、その後の研究でこのラインは厳密なものではなく、両種が
   混棲する地域などもあることが分ってきた。

   関西や太平洋側にも産地があり、どちらかというと温かな太陽が
   よく似合うギフチョウに対し、ヒメギフチョウは北国のイメージが
   強い。

   北海道にはヒメギフチョウだけしか棲んでいない。

   エゾヒメギフチョウ、ミチノクヒメギフチョウ、シナノヒメギフチョウな
   どと呼んで愛好家はこの蝶を大切にしている。
ヒメギフチョウ

ヒメギフチョウ



ヒメギフチョウ
ヒメギフチョウ
(2013年4月17日 長野県安曇野市)
 

 篠ノ井線の駅を降りると、目の前に常念岳がそびえ立っていた。
 まだ、真っ白な雪をかぶり、堂々とした山容がまぶしいほどだった。
 右手に燕岳、左に蝶が岳、北アルプスの山並みがそろっている。

 駅前にAさんが待っていてくれた。
 3日前、「ヒメギフチョウが出始めましたよ」というご連絡をくれ、きょう
 は案内をかって出てくれたのだ。

 沢沿いの駐車場に車を止め、そこから20分ほど山道を歩くと、そこ
 はヒメギフチョウの発生地だった。斜面にカタクリが咲き乱れている。
 しばらく待っていると、ヒメギフチョウがやって来て、カタクリの花の蜜
 を吸い出した。

 自然界の中でこんなにも美しい春の情景はあるだろうか。

 しばらく見ていると、一頭のヒメギフチョウの姿が目に入った。
 動きがどうもおかしい。

 カタクリの花にしがみついている姿を観察すると、右の翅が縮れて
 固まっていた。蛹から羽化する時、何かの障害物があって翅が伸び
 切らなかったのだろうか。これでは飛ぶことは出来ない。
 自然の厳しさを垣間見た思いがした。

 午後から別の場所に移動した。
 お寺の境内が発生地になっている。

 隣接した民家の庭先のシバザクラにヒメギフチョウがやって来るの
 だった。

 Aさんのお蔭で楽しい一日を過ごすことが出来たのだった。
 
ヒメギフチョウ
ヒメギフチョウ
(2013年4月17日 長野県安曇野市)
 
ヒメギフチョウ
ヒメギフチョウ
(2013年4月17日 長野県安曇野市)
 
羽化に失敗したヒメギフチョウ
羽化に失敗したヒメギフチョウ
(2013年4月17日 長野県安曇野市
) 
 左前翅を損傷したヒメギフチョウ
左前翅を損傷したヒメギフチョウ
(2018年4月22日 長野県安曇野市)
 ヒメギフチョウ
ヒメギフチョウ
(2018年4月21日 長野県安曇野市)
ヒメギフチョウ
ヒメギフチョウ
(2018年5月1日 長野県白馬村)
 
 ヒメギフチョウ
ヒメギフチョウ
(2018年5月1日 長野県白馬村)

ヒメギフチョウ
ヒメギフチョウ
(2009年5月11日  長野県入笠山)
   入笠山は花の山として知られている。

   もうすぐスズランがいっせいに花をつけるし、高山植物も咲き始
   める。

   ヒメギフチョウの発生地としても名高い。昔は頂上近くに広がる
   牧場にもいたが、いまはあまり見かけることはなくなってしまった。

   だから、入笠山のヒメギフチョウと会うためにはかなりの林道歩き
   が必要だ。車で入る人も多いが、ことしは林道の崩落がひどく、牧
   場から先は交通止めになっていた。

   林道をてくてく歩き、目星をつけてまた、わき道に入ってみる。
   一日で20キロは歩いたろうか。

   それでも林道には越冬したキベリタテハやエルタテハ、スジボソヤ
   マキチョウが多く、時間が経つのを忘れるほどだ。

   やがてぽつぽつとヒメギフチョウが現れる。

   この山はこの時期、まだ、スミレぐらいしか咲いていないので、ヒメ
   ギフチョウはスミレの花にやってきては吸蜜する。

   林道歩きで疲れた体もヒメギフチョウの姿を見ているうちにどこか
   へ吹き飛んでいくのだった。
ヒメギフチョウ
ヒメギフチョウ
(2009年5月11日 長野県入笠山)
ヒメギフチョウ
ヒメギフチョウ
(2009年5月11日 長野県入笠山)


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