クモマツマキチョウ


 クモマツマキチョウ♂
クモマツマキチョウ♂
(2016年5月12日 長野県北アルプス)
  「TSU-I-SO」という蝶の週刊誌がある。むしやまちょうたろう氏が手書
 きで始めたユニークな冊子だが、その創刊間もない1976年3月の第
 58号は「クモマツマキ大作戦」という胸躍るタイトルだった。

 クモマツマキチョウは明治43年、中村清太郎画伯によって発見された
 のだが、この58号には画伯が書いた高山蝶発見物語の一端が転載
 されていた。

 画伯は「なにしろ明治43年という茫々半世紀の昔語りで、時の霞にお
 ぼろながら、感動の情景は今も皮膚にピチピチ蘇るのが不思議だ」と
 述べ、後立山から立山山脈の縦走を企て、籠川入りの扇沢を遡った
 と書いている。

 クモマツマキチョウと出会ったのは棒小屋乗越。そのお花畑だった。
 「私は息をのんで立ちすくんだ。早くも大変なものが現れたのだ。それ
 は花とまがう一羽の美しい、しかも見馴れぬ蝶である。私は胸の鼓動
 を感じつつシラネニンジンの白い花穂に蜜を求める小蝶に、そっと近
 づいて観察した」

 画伯は帽子を手に取るとそっと蝶の上からかぶせるが、体はガタガタ
 ふるえていた。だが、帽子をそっとめくるとその隙に蝶は逃げ出す。
 必死で追いかけ再び、帽子で掬いあげた。

 「こんな美しい蝶が今まで人に知られなかったとは…」

 それから100年余が経つ。

 今もこの蝶は蝶愛好家垂涎の蝶である。 
 クモマツマキチョウ♂
クモマツマキチョウ♂
(2021年5月26日 長野県北アルプス)
 クモマツマキチョウ♀
クモマツマキチョウ♀
(2021年5月26日 長野県北アルプス)
クモマツマキチョウ
クモマツマキチョウ♂
(2017年5月28日 長野県北アルプス)
 
クモマツマキチョウ
クモマツマキチョウ♂
(2017年5月28日 長野県北アルプス)
 

クモマツマキチョウ♀
(2017年5月28日 長野県北アルプス)
 
クモマツマキチョウ♀
クモマツマキチョウ♀
(2017年5月28日 長野県北アルプス)
 
クモマツマキチョウ♀
クモマツマキチョウ♀
(2017年5月28日 長野県北アルプス) 
クモマツマキチョウ
クモマツマキチョウ
(2018年5月11日 長野県北アルプス)
 
クモマツマキチョウ
クモマツマキチョウ
(2018年5月11日 長野県北アルプス)
 
 クモマツマキチョウ♂
クモマツマキチョウ♂
(2016年5月12日 長野県北アルプス)
クモマツマキチョウ♂
クモマツマキチョウ♂
(2016年5月12日 長野県北アルプス) 
  蝶の季節の歩みが異常に早い。
 ギフチョウやヒメギフチョウが華麗な舞を見せ始めたと思っていたら、あっ
 という間に姿を消し、もうクモマツマキチョウが発生を始めた。
 例年、クモツキと出会うのは5月の後半なのだが、ここ数年は5月中旬、
 それが今年はGWには姿を見せたという。「白馬では4月後半に撮影出
 来た」というから、驚くばかりだ。
 地球温暖化が一因なのだろうか。

 この季節の北アルプスは何とも気持ちが良い。萌え出した若葉が眼に
 まぶしい。山脈はまだ白い雪をかぶって凛とした山容を輝かせている。
 雪解け水が流れる川はあくまで透明で、清澄だ。

 それをバックにオレンジ色の翅をきらめかせながらゆったりとクモマツマ
 キチョウが飛んでいる。それを見ていると蝶を趣味に持ったことが本当
 に幸せだと思うのだ。

 GWから体調はいまひとつだったが、今年もクモツキに会いたくなった。
 川畔を歩いているとどこからか腸が1頭舞い降り、スミレで吸蜜を始め
 た。思い切ってやって来て良かったと思った。
クモマツマキチョウ♀
クモマツマキチョウ♀
(2016年5月12日 長野県北アルプス)
 
クモマツマキチョウ♀
クモマツマキチョウ♀
(2016年5月12日 長野県北アルプス)
 
クモマツマキチョウ♀
クモマツマキチョウ♀
(2016年5月12日 長野県北アルプス)
 
クモマツマキチョウ♂
クモマツマキチョウ♂
(2016年5月12日 長野県北アルプス)
 
クモマツマキチョウ♂
クモマツマキチョウ♂
(2016年5月12日 長野県北アルプス)
 
クモマツマキチョウ♂
クモマツマキチョウ♂
(2016年5月12日 長野県北アルプス)
 
クモマツマキチョウ♂
クモマツマキチョウ♂
(2016年5月12日 長野県北アルプス)
 
 クモマツマキチョウ
クモマツマキチョウ
(2013年5月22日 長野県北アルプス)
クモマツマキチョウ
クモマツマキチョウ
(2013年5月22日 長野県北アルプス)
 
クモマツマキチョウ
クモマツマキチョウ
(2013年5月22日 長野県北アルプス)
 
クモマツマキチョウ
クモマツマキチョウ
(2013年5月22日 長野県北アルプス)
 
クモマツマキチョウ
クモマツマキチョウ♂
(2012年5月30日 長野県北アルプス)
 
  「オレンジ色のニクイ奴」という有名なキャッチコピーは夕刊フジが
  創刊されたとき考え出された。

  夕刊フジは1969年、日本で初めて駅売りのタブロイド新聞として
  発刊された。首都圏のサラリーマンに愛され、一時は帰宅の電車の
  中はこのオレンジの新聞をもつ人で溢れていた。 

  阪神・淡路大震災やオウムの麻原逮捕の頃は夕刊フジの黄金時代
  だった。サッカーW杯の「ドーハの悲劇」という言葉は誰でも知ってい
  るが、この大見出しを付けたのも夕刊フジだった。

  今は帰宅の電車の中で新聞を読んでいる人は少ない。
  時代の流れを感じる情景だ。

  「オレンジ色のニクイ奴」というとこのクモマツマキチョウもそうだ。
  まだ、残雪で真っ白な北アルプスをバックに清流を滑るように飛ん
  で来る。時には雪渓の上をオレンジの翅を閃かせて飛ぶ。

  胸が熱くなる、宝物のような蝶だ。
  いつまでも保護したいが、こちらの「オレンジ色のニクイ奴」もほんと
  に少なくなってしまった。
クモマツマキチョウ♂
クモマツマキチョウ♂
(2012年5月30日 長野県北アルプス)
 
クモマツマキチョウ♀(右)に求愛する♂
クモマツマキチョウ♀(右)に求愛する♂ 
(2012年5月30日 長野県北アルプス
クモマツマキチョウ♂
クモマツマキチョウ♂
(2012年5月30日 長野県北アルプス)
 
クモマツマキチョウ♂
クモマツマキチョウ♂
(2012年5月30日 長野県北アルプス)
 
クモマツマキチョウ♂
クモマツマキチョウ♂
(2012年5月30日 長野県北アルプス
) 
クモマツマキチョウ♂
クモマツマキチョウ♂
(2012年5月30日 長野県北アルプス)
 
クモマツマキチョウ
クモマツマキチョウ
(2014年5月28日 長野県北アルプス)
 
クモマツマキチョウ
クモマツマキチョウ
(2014年5月28日 長野県北アルプス)
 
クモマツマキチョウ
クモマツマキチョウ
(2014年5月28日 長野県北アルプス)
 
クモマツマキチョウの飛翔
クモマツマキチョウの飛翔
(2014年5月28日 長野県北アルプス) 
クモマツマキチョウの飛翔
クモマツマキチョウの飛翔
(2014年5月28日 長野県北アルプス)
 


南アルプスのクモマツマキチョウ

クモマツマキチョウ♂
クモマツマキチョウ♂
(2016年5月22日 長野県南アルプス)
 
 南アルプスにずっと行きたいと思っていた。
 しかし、バスや電車を使うととても不便で時間もかかる。今の体調では
 とても無理だとあきらめていた。そんなオヤジに同情したのか、息子が
 車を出すから行こうよと、誘ってくれた。

 午前3時半自宅を出発、高速道路は渋滞もなく7時過ぎには林道の
 入口に到着した。ここからバスを乗り継ぎ、そこから先は徒歩だ。
 幸い天気は快晴。風が少しあるのが残念だ。
 のんびり歩いて行くと、クモマツマキチョウが飛んだ。ここからずっと先
 の沢まで行くと良い観察ポイントになるらしいが、あまり無理はしない
 方がいい。ここで粘ることにした。

 クモマツマキチョウは高い崖の上を飛び、なかなか下に降りて来てくれ
 ないが、それでもサービス精神旺盛な個体がたまに降りて来てくれる。
 やっと何とか撮影出来た。

 南アルプスのクモマツマキチョウは前翅の黒点が三日月型になるのが
 特徴だ。北アルプスの個体は丸い黒点になる。

 帰りの高速は大渋滞で朝の倍の6時間半もかかったが、初めての南ア
 ルプスのクモマツマキチョウを堪能そたのだった。 
クモマツマキチョウ♂
クモマツマキチョウ♂
(2016年5月22日 長野県南アルプス)
 
クモマツマキチョウ♂
クモマツマキチョウ♂
(2016年5月22日 長野県南アルプス) 
クモマツマキチョウ♀
クモマツマキチョウ♀
(2016年5月22日 長野県南アルプス)
 
クモマツマキチョウ♀
クモマツマキチョウ♀
(2016年5月22日 長野県南アルプス)
 




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